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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

それは全く抱きしめ接吻ぐらいしようという気勢であった。

「何しに来たの? あなたは?」

あやかさんはジリジリ宇津木さんのうしろへ、身を隠すように退いたが、光一はそんなことは意ともせず、なんなら二人の女を一緒にまとめて抱いてしまうぐらいの調子で、

「ヤア今日は。あんたは、どなた? え? 宇津木秋子さん。あ、高名な女流作家、お見それしました。まだ若いんだな、これは美しい。いずれ、ゆっくり御挨拶します。昔の色女が待ちかねていますからね」

光一はあやかさんの腕をつかんだ。あやかさんは激しく振りはらって五六歩逃げて、

「悪党! ろくでなし! お前なんかの来るところじゃない。帰りなさい。ねえ、誰か……」

私たちの方をウロウロ見たが、又光一がシャニムニつかみかかろうとするので、言葉をつづける暇もなく、顔色を失って、逃げだした。その後姿に目もくれず、光一はハンケチをだして額の汗をふいて、

「いとしい人に出ッくわすと、女の子はとりのぼせるよ。どうして女という奴は、待ちこがれた人に、待ちこがれたと言えないのかなア。ねえ宇津木さん、日本の女は色ごとの訓練が足りないからね、そうでしょう」