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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私はまだ一馬先生毒殺の現場も見ておりません。ただ警察の方から話をおききしただけですが、この事件は私がすでに十日以前から予定していたことですから、今までの推理が正しいように、次の推理も正しい筈です。たぶん一馬先生は、今朝明方ちかくまでイライラと寝もやらず煩悶し、不安に沈んでいられたことと思います。なぜなら、前夜、広間の柱にハリ紙を見られたからで、事件の犯人を海老塚と信じ、海老塚氏の逮捕によってもはや身に危険のなきものと安堵しておられた一馬先生の驚愕顛倒、不安のほどは同情に余りあります。不安のあまり寝もやらず明方に及んだ同氏に、恐らくあやか夫人が催眠薬をすすめたものと思われます。そして、一馬先生は青酸加里をのんで死ぬ、それだけでも自殺で通る筈ですが、真犯人としての自殺という証拠が残されてないために、あやか夫人は無理心中を迫られた格闘の跡を装い、もうダメだ、という一馬先生の告白を世に伝えるために、自身も舌を噛みきって一時喪心するほどの狂言をはたらかなければならなかったのでしょう。こうして、十ヶ月来の計画せられた犯罪は、まんまと最後の仕上げを終ったのであります」