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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

そのとき一方の壁際から物音が起った。数名の刑事が慌てて前へとびだした。あやか夫人の椅子が倒れ、立ち上ったあやか夫人が胸を抱くように掻きむしってフラフラと倒れるところである。刑事の抱きとめる手がおくれて、あやか夫人は下へくずれ、二三度床板をつかむように這いだして、やがて、くずれて、動かなかった。

刑事の中にまじっていた医者が進みでて診察し、数人で人工呼吸のようなことを施していたが、やがて諦めて立ち上った。

私がふと気付いてピカ一を見ると、ピカ一の左右、後に、五名の刑事が寄り添い両手をシッカととっている。ピカ一は立ち上っていた。あやか夫人の倒れた姿をテーブルごしに見つめているが、恐らくその極めて一部分しか見ることができないようであった。

ピカ一は、けわしい視線をカングリ警部にそそいで、

「あの人のところへ、行かせてくれたまえ。あの人、あやか」

カングリ警部は判断に窮して目玉をむいて黙っている。

「カングリ警部殿、わかるでしょう。オレがあの人、あやかのところへ行きたいと云っているのだ。犬猿ただならざるピカ一が、だよ。さすれば分明ではないか。つまり、オレは、オレとあやかとが犯人であったことを、今や、公然と認めてあげているのだ」