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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

カングリ警部はうなずいて、承諾の意を表した。

「じゃア、オレの腕をとるのも、よしたまえ。しばし、最後の自由を与えよ」そして、ピカ一は刑事の腕をふりはらい、一人ノッシノッシとテーブルを廻って歩いて行った。テーブル正面の巨勢博士のうしろを通るとき、軽く博士の頭をなでて、

「うまく、やった。探偵小僧氏。汝、賞讃さるべし」と、偉らそうなことを言いすてて、あやか夫人の遺骸の前にひざまずいた。

あやか夫人の手をとって、その死顔を数分間もみつめていたが、顔をあげて、誰にともなく、

「バカだったよ。死ぬ必要はなかったのだ。待合のオカミや女中ごときが現れたところで、それが何物でもないではないか。そんな証拠を吹きとばすぐらい、それぐらいの智恵をオレに信じてくれてもよかったじゃないか。はやまったことをしてくれたよ。今となっては、もはや、仕方がない。自殺は、これ、犯人の、また、ひとつの告白なり、か。よろしい、愛するものへの情誼により、良人ピカ一氏も、つきあって告白致すであろう。アーメン」

ピカ一はあやか夫人の手をおしいただき、長く長く、くちづけした。あまりに長い時間であった。