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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

消却法によると、まッさきに犯人でなくなってしまうような完全なアリバイをもつ人物が、実は犯人であるという、そこにトリックがあり、探偵小説の妙味があるのである。然し、従来の探偵小説の多くは、このトリックにムリをして、そこで人間性をゆがめ、不合理な行為や心理をムリヤリにデッチあげて、又、作者も読者も、探偵小説のトリックはそういうものだと鵜呑みにして疑っていないのだ。

私は中学生ぐらいのとき、佐藤春夫氏の短篇探偵小説をよんで感心したことがあって、もう題名も忘れたけれども、ある男が本を紛失した。その本を心理通の友人が探してくれる話であるが、要するに、その紛失した人は、本をもって立ち上ったとき、便所へ行く気持になり、その本を二階の階段を降りる途中かに、壁のナゲシのような暗らがりのところへヒョイとのせて行った。そして小便してしまうと、人はよく排便と同時にやりかけたことをド忘れするもので、程へて本のことをフト思いだした時には、どうしても見つからなくなってしまったのである。

私が犯罪心理の合理性というのは、こういう人間性の正確なデッサンによるものをいうのであって、探偵小説を愛読して、人間性、合理性という点で裏切られるたびに、ひとつ自分で、ケンランたる大殺人事件を展開させ、犯人の推定をフンキュウさせながら、人間的に完全に合理