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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
絵の方じゃ、そんなエゲツないことは題材にならないから、絵はノーブルなもんだ。文学は汚らしいな」
「起してこよう」
珠緒さんは平然と言いすてて、シャンソンを唄いながら階段を駈け登って去ったが、まもなく、音もなく、戻ってきた。真ッ蒼だった。目が焦点を失っている。ちょッと、喋ることができない様子であった。
「王仁さんが、死んでる」一馬がビックと顔をあげて、
「なに?」
「王仁さん、殺されている」
あいている椅子のひとつへフラフラ腰を下して、化石のように放心した。一馬がのろのろ立上って、頻りに人々を見廻しながら、
「寸兵。君だけ」と、私によびかけて、
「皆さん、待ってて下さい。私が見てきます。寸兵だけ、一しょに。それから、海老塚さん」
一座はまったく無言であった。私と、海老塚医師が立ち上った。そして私たち三人だけが、シワブキもない沈黙の室から歩き出たのである。
まさしく王仁は殺されていた。一糸もまとわぬ裸体であった。心臓を一突きにやられている。その短刀が彼のカラダをピンでとめているように、突きさしたままだ。不思議に、血が殆ど見られない。コイツ奴が人を殺さずに、人に殺されるなどとは嘘のような話で、まるで、現実の事件の中にいるような気がしなかった。