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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「おやおや、こりゃおかしいよ。ベッドの下に洋服の上衣がある」

上衣をひきだしてみると、一ヶ所に埃がベットリ、ちょうど雑巾のように何かを拭いた跡をとどめている。

「おやおや、どこを拭いたんだろう。この卓の上かな、机の上かな」

「そんなところでこれだけのゴミがつくものかい。きまってるじゃないか。上衣のあった場所さ」

「ベッドの下ですか」

「のぞいて見ろ」

「ウム、なるほど、たしかに、ここをふき廻した跡があります。しかし、なんだってベッドの下を拭きやがったんだろう。血も水も、一滴もこぼれた跡もありゃしないに」

上衣は、被害者のものであった。

現場の綿密な捜査を終ったのが夕方で兇器には指紋がなく、枕元の卓上のフラスコとコップから、いくつかの指紋がでた。一同の指紋をとって合せてみると、被害者の指紋の外に珠緒さんの指紋と秋子さんの指紋がピッタリ合う。秋子さんの指紋は明かにフラスコを握ってコップに注いだものであった。フラスコにはごく小量の暗い褐色の液体が残っていた。

「窓は始めから開いていたのか」

「ベッドの足の方の窓は明けっ放してありました。然し、犯人はそっちから侵入したものではありませんな。