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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
「奥さんはネマキの方が晴着じゃありませんか」
と私がひとつひやかしてやると、一馬が苦笑して、
「こんな晴着みたいなネマキばかり十四五着はあるだろう。来年の今ごろは何十着になることやら。同じネマキを二晩つづけて着るのが残念だというので、今もブツブツ土居光一を呪いながら着代えていたところなんだよ。この部屋には自分の着物が置いてないから。朝昼晩、きまって着物を着かえる。髪の形を変える。首飾りをつけかえる。根気のよいのに、驚くばかりだよ」
あやかさんは幽かに笑っているばかりで、返事をしなかった。どのような表現によって話題にされても、要するに極愛せられていることを確信しているのだろう。この人の愛情はどんなに可愛いいだろうか。それは全く夜のために生れた女のようなものだ。あやかさんは殺人犯人を怖れているが、然し実際はそんなことはさしたることではない筈なのだ。ただ可愛く、美しく、先天的にそれだけしか思いめぐらす本能がないようなものだ。
私が自室へ戻ると、京子がいくらかムッとした顔付で、
「今、旦那様の小間使の方がきて、あした朝食のあとで二人にきて下さいって。出向いて行きたいけれど、おからだが、いけないんですって」