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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

珠緒さん以外はどなたも触れる余地がなかった筈ですわ」

千草さんは断言して、賛成をもとめるように見廻した。

「するとゲンノショウコを袋からヤカンへ入れてコンロにかけたのも、煎じたあとでコンロから下してフラスコへつめかえて持ち去ったのも珠緒さんですね」

「ええ、その通り」と千草さんは、取りすまして言った。

「いったい王仁は催眠薬で死んだのですか」と私がきいた。

「いいえ、催眠薬で眠らせて短刀で刺したのでしょう。ゲンノショウコに投入された催眠薬をまとめて一飲みにすると致死量ぐらいになるでしょうが、宇津木さんも飲まれたし、お嬢さんも飲まれたらしいようですから、望月さんの飲んだのは全体の三分の二ぐらい、それによって死ぬという分量ではありませんでした」

「催眠薬で殺せばいいのに、どうして二重の手間をかけたんでしょうね。そこに何か意味があるのじゃありませんか。それに警部さんは催眠薬で眠らせて刺したと仰言るけれども、眠らせたのと刺したのが別人の仕業でないとは言えないでしょう。それとも、同一人の仕業だという証拠があがっているのですか」

「ごもっともな疑問です。同一人の仕業かどうか、なぜ催眠薬で殺さなかったか、我々にとっても不明であります。