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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
部屋を掻き廻したあとは見られなかった。
たった一つだけ、変ったことがあった。
珠緒さんは泥酔のあまり吐いて苦しんだから、枕元には新聞紙をしいた洗面器と盆の上に薬鑵とコップが置いてあったが、ヤカンとコップの水にモルヒネの粉末が投げこまれていた。
盆の上に少しばかり白い粉末がこぼれていた。コップをとりあげて、すかしてみると、かすかに白い沈澱がみられる。これを発見したのは八丁鼻で、昨夜カイホーしたという女中、富岡八重という二十六の丸ポチャのちょッと可愛いい田舎娘であるが、これをよんで、
「このコップは塩水かね」
「ハア。いいえ、真水でございます」
女中の話によると、珠緒さんが吐き気を催したから、先ず洗面器をもって駈けつけて、それからヤカンに塩水をつくって持って行くと、一度うがいのあとで、塩水はイヤだから真水にとりかえてきて、と言った。
そこでヤカンとコップを持ち帰って真水をみたしてきたが、そのときバケツと雑巾も持ってきて、汚れたところをキレイにふいた。
女中が広間へ海老塚医師をよびに来て怒鳴りつけられて退き下ったのはこの時で、仕方がないから諸井看護婦にきてもらった。