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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

立腹と悲しみとは別の感情なのかも知れないが、こうなると私もいささか反撥せずにいられない気持も首をもたげざるを得ないから、

「本日は大変なことでした。思いがけないことで、さぞ御気落ちのことと存じます」

「いやいや」

老人はさえざった。さえぎったという以外には別にほかの顔付ではなかった。いくらか気むずかしい様子に見えただけだった。

「これも私のせいかも知れぬ。私がこんなものだから、子供も毛色の変った奴が生れてくるのだね。是非もないことじゃ。私は然し、ひとつ腑に落ちないことがあるが」

多門老人は口をつぐんだが、すぐ明るい顔になって、

「いや、私の取越苦労かも知れぬ。からだがヒマだから、つまらぬことを色々と考えるのじゃろう」

「それを仰言っていただけませんか。案外そんな漠然たるカンがものの急所を射ぬいていることが多いものです」

「まアさ。この話は止しましょう。せっかくお招きしておもてなしも出来ないが、これを記念に納めていただきたい。これは外遊のみぎり北京で手に入れた八大山人の小品じゃが、縹渺たる静寂、これを孤独というのかね、身にしみる魂の深いものがある。それから、京子には、これも私が外遊のみぎり巴里でもとめたネクタイピンですが、ポッと出の田舎ザムライも何がな一つ人の気のつかぬ所へ意外な装飾をぶらさげて見せてくれようと思って