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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
私たちに対する怒りというものは、もはや、まったく見られなかった。思えば私の取越し苦労で、この人は例の大人物という、日本の英雄豪傑のあの型なのだろう。一向にクッタクのない様子で、むしろ明るく生き生きと、
「サア、サア、あなた方、よく来て下すった。私の方からみなさんの方へ遊びにでたいと考えながら、このところ風邪をひいて、胃をいためたもので、閑居すると、ちょッとのことで病気する、病気がこたえる、仕事のない身はもろいものです。ひところは、あなた方に腹を立てたこともあったが、今はもう、そうじゃない。むしろ、なつかしんでいます。みんな私の我がままのせいじゃ」
多門老人は慈父のように機嫌がよかった。私は然し、たった二人の子供のうちの一人娘が殺されたというのに、この老人の平然として全く何事もなかったとしか思われない態度には、いささかならず感動した。まったく虚勢と思われる節がない。いったいがこの老人は家事には超然たる人物であることは知ってはいたが、そんな人間に限って、まさかの人事に却って激動して取り乱しがちなことはまま有ることであり、私と京子の場合などでも、大変な立腹だったということをきいている。