轻松读懂日语经典作品
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页
「意味深ですのね」
「いや、信州の白百合はね、谷間じやなくつて、火山の噴火口に咲いてるんだ。あぶない、あぶない」
こんな風な戯談にまぎらして、彼は、洋服を着かえはじめた。その間、百瀬しのぶは、多津に連れられて、階下におりた。おりると、もう、下では、母をふくめた女たちの笑い声が聞える。活き活きとしたものを、どこへでも運んでいく娘とみえる。
彼は、その時、なにものかにそゝのかされるように、万年筆をぬいて、さつきの書物の一冊の扉へ、「味岡小萩嬢へ、心をこめて、著者」と書いた。そして、更に下巻の扉へ、同じ意味をフランス語で、“A Melle Kohagi, de tout mon coeur, Auteur.”と、すこし気がとがめながら、書いて、ぱたりと頁を閉じた。
それ以来、京野等志の身辺は、なにやら急に色めきたつたようにみえた。彼は信州に嫁いだ小萩のことを、決して忘れるどころではなかつたが、そうかといつて、現在の二人の間の距離を、そう手軽に縮められるものとは思つていなかつた。こつちが一歩近づいていけば、むこうは二歩後すざりをする気配がはつきりと察せられる以上、すべての努力は当分無駄だという見極めをつけて、たゞ、来るか来ぬかもわからぬ機会を待つていたのである。