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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页
二
そして、こゝへ来て、彼の眼にふれ、耳にきくことは、すべて、そういう気持に拍車をかけるばかりである。彼はまだ、なんの決意もしていない。自分がどこまで飛びこんで行くかもわかつていない。彼はたゞ、確信を得たいのである。
なるほど大地主の名にそむかぬ堂々たる構えの屋敷が、もうそこに見えていた。いくつかの土蔵をバックに、城郭のような白壁の塀をめぐらした長久保家の門の前に立つた時、彼は自分自身に言いきかした。
――彼女の心を試すような言葉はつゝしもう。
しかし、百瀬秀人の後につゞいて勝手口の土間へはいつた彼は、囲炉裡ばたの薄暗い光線の中に手拭を頭にかぶつた小萩の姿をちらと見てしまつたのである。
二
百瀬秀人は仕事があるからといつて、彼をひとり残して帰つて行つた。十二畳のひろい座敷にひとり待たされている間に、京野等志は、たつた今、たしかに小萩だと思つた女は、あるいはそうではなかつたのかと疑いはじめた。なぜなら、さつきから座蒲団をすゝめたり、コタツの火をもつて来たり、いらつしやいませとていねいにお辞儀をしたりする若い女の年頃がちようど似たりよつたりで、あの瞬間、小萩だと思いこんでもしかたがないからである。