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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

三

「好きじやないが、つきあい酒ならつていう口か。おれとおんなじだ」

「おやじはどうだかな。偽善だよ。子供の教育によくないと思つてるんだ」

「それほどでもあるまい。以前よりはだいぶん砕けて来たじやないか」

「うん、もつと砕けりやいゝんだよ。とにかく面白くねえよ、おやじは」

そう言いながら、弟の深志は、階下へ降りて行つた。と、入れ代りに、妹の多津が、速達が来たといつて、彼の手に一通の封書を渡した。

三

達者な行書で、たしかに見覚えのある字体ではあつたが、一瞬、彼の頭は混乱して、信州松本在に住む六笠久史なる差出人の見当がつきかねた。

が、封を開いて、和紙の水色の書簡箋にやゝ薄めの墨で、まず、京野等志さま、と書き出した、その調子で、彼はやつと、さてはと思い、急いで最後の署名をたしかめ、もう、息づまるような胸さわぎを覚えた。

署名は、たゞ、「小萩」としてあつた。

とつぜんこんなお便り差しあげ、さぞ意外に思召すことゝ存じます。お別れしてまる七年、最後のお手紙いたゞいてから、もはや六年になります。過ぎ去つた長い年月は、わたくしにとつて、たゞ空しく生きた月日でございました。