轻松读懂日语经典作品
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页
この日あるがために
一
まず着のみ着のまゝといつてよく、わずかに差押えをまぬがれた勝手道具の類と、人数だけの夜具が運び出されたに過ぎない。
母は、玄関の前で、しばらく、涙を拭いていた。
父は、終始無言のまゝ、母の差出す袷羽織に手を通し、最後に、庭の松の木を見あげて、悄然と門を出た。
京野等志は、ひとり後に残つた。債権者に家屋家財を引渡すためにである。彼にとつて、それは、単なる事務にすぎなかつた。なんの感慨も催さないというのが、いつわらぬ事実である。それどころか、むしろ、さばさばとした痛快味さえ覚えるほどの瞬間もなくはなかつた。
さればこそ、彼は、露ほどの屈托もなく、翌朝、上野を発つて、小諸に向つた。
冬の山は、白雪の間に、荒々しい岩の肌をのぞかせて、眼の前にそゝり立つていた。
この日あるがために
一
京野等志からの返事がもう来そうなものだと、小萩は、こゝ二、三日、なにも手につかなかつた。軽症患者の日課はわりにゆるやかで、雪の山道が大儀でさえなければ、いつでも診察時間以外は好きな時に散歩ができる。彼女は、今日も、朝の化粧をしながら、鏡にうつる自分のすがたが、すこしは見られるようになつたかしらと、わざとあどけなく小首をかしげ、さて、裏山をひとまわりするための、誰にみせるでもない衣装の選択を、あれこれと意のなかでしでみるのであつた。