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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

変転の外に

一

「へえ、新橋ですか……」

と、彼は、眼を丸くした。そして、妹美佐のことが、ふと喉まで出かゝつたけれども、それは、つい口に出ししぶつた。

「だれか、ご存じ?」

「いや、いや、僕は、その方面とはまつたく縁がありません。たゞ……」

と、この時、やつと、腹がきまり、

「たゞ、僕の妹が、やつぱり芸者をしていましてね、新橋で……」

「あら、なんておつしやるの?」

「小菊とかいう名で出ていました。本名は、美佐ですが……」

彼が、名前をいうと同時に、女主人は、それこそ、後ろへ倒れるかと思うほど、大げさに反り返つて、

「あら、まあ……小菊ちやん……こないだ、あんなことになつた……あたしの、一番の仲よし……」

それは、まんざら、嘘でもないらしい、どこか、その親しみをこめた呼び方でこつちをも引きずり込むような、調子であつた。

変転の外に

一

遠矢幸造の隠し妻、平山いく、が、妹美佐の親しい友達であつたという事実は、なるほど、話を聞けば聞くほどよくわかつた。しかし、京野等志がなによりも意外に思い、ふと胸をつまらせ、これが感傷というやつだな、と、われながら自分を叱りつけたくなつたのは、平山いくが、妹美佐の親兄弟について語つた一切の言葉を、決して反感や敵意を含んだものでなく、常に肉親の愛情を信じ、しかも自らそれに叛かないわけにいかなかつた苦しさを訴える