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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

二

三度目は気をつけなくつちや……」

「そうだよ」

と、母は、大きくうなずいた。

「お父さんもだんだん折れて来なすつた。時代がすつかり変つたんだから……」

すると、多津が、しんみりと、

「いゝわねえ、お母さんは……。時代が変つても、それほどお驚きにならない修業ができていらつしやるから……」

「そうともさ。あたしにや、自分の時代なんてものはなかつたんだもの」

これは皮肉な名言であつた。彼も、多津も、顔を見合わせて、苦笑した。

二

一週間たち、二週間目がもう終ろうとするのに、小諸の療養所からはなんの音沙汰もなかつた。急変がない限りという医者の言葉が思いだされ、この病気も、時間が有利に解決するという場合があるらしく思われた。それゆえ、二週間を経てなんの音沙汰もないということは、すくなくとも、意を強くするに足る事実ではないか、と、自分に言いきかせた。

こういう矢先、会社の経営が急に困難になりつゝあるという寝耳に水の情報が、父を通じて彼にはいつた。

「それや、いつたい、どういうわけなんです。僕の工場だけは、立派に採算がとれているはずですよ」

「だからさ、結局、工場によつて成績が違うということ、それに、税金の過重負担などもあつて、全体の収支のバランスがとれなくなつたということ、だ」