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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

「そんな意味をおつけにならなくつていゝわ。たゞ、あの花のかたちと色の感じよ……お着物のせいもあるわ、きつと……」

なるほど、この日、小萩は、万一の用心に持つて来ておいた、濃い紫地にナンド色のタテ縞のあるお召のアワセを着、そのうえに、薄茶色の羽織をひつかけていた。

高原の強い日光の下でも、とけるひまなく降り積つた雪が、山頂からこの山裾にかけて、草原という草原一帯を覆つていた。わずかに、炭焼小屋へ通じる小径が、松林をぬけて、谷へ降つて行く、その踏みかためられた雪の一と筋だけを、ひろうようにして、彼女たちは歩いた。

島内京子は、いつも散歩の時は、医者に言われたとおり、紫外線よけの色眼がねをかけていた。小萩がそれをしないでいるのを、今やつと気がついたように、

「おばさまは、お眼がお丈夫なのかしら? 眩しくおありにならない?」

と、彼女の方を見上げながら、たずねる。

「あたしは、サン・グラス、似合わないから……」

小萩は、笑いながら答えた。そして、ふと、自分でもその理由が理由にならぬことをおかしく思い、

「それや、眼のためにはいゝにちがいないけれど、あたしはとにかく、一生眼がねはかけないつて決心をしてるの。