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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

しばらく、沈黙がつゞいた。彼女の、軽い溜息が一度、二度、彼の耳に伝わつて来た。すると、いきなり、思いがけなく、はにかみを含んだ声で、

「ねえ、ちよつとだけ、こゝへいらしつていゝわ。おとなしくなさる約束でよ……」

おとなしくしていないのは、結局、彼女の方であつた。

京野等志は、いつか、深い眠りにおちこんでいたが、小萩は、瞼がさえかえつて、夜の明け方まで、まんじりともしなかつた。

それでも、二人は、八時に床をはなれて、なにか、しんと静まり返つた気分で、朝食をとり、小一時間、公園のあちこちをうろついた。檻の小熊や、猿のむれに笑い興じ、藤村の詩碑の前にたゝずみ、千曲川の急流にのぞんだ崖の上で、小萩は、思い出したように、浅間の爆発について、その時の詳しい話をしてきかせた。

「からだがぐつと宙に押しあげられたと思つたら、部屋じゆうの窓はおゝかた外れて、窓ガラスがメチャメチャにわれたのよ。それと、ほとんどいつしよに、爆弾の落ちたような音がして、部屋じゆうが、いつまでもゆれてるの。電燈のカサは落ちる。テーブルの上に立て、あつた薬瓶は倒れる。そのうちに、屋根へバラバラ石のあたる音がするでしよう。