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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

ところで、偶然にも、その味岡の家というのが、彼が家庭教師をしている某家へ通う、そう遠廻りにならぬ道順で、それから後は、駅からの往復を自然、そつちの道を通つてということにした。別に、わざわざ立寄るほどの理由も口実もないまゝに、いく月かは、たゞ、門の前をいくぶんゆつくり歩き、二階の窓をそれとなく見あげ、時たま大きく咳払いをしてみるぐらいですぎたのだが、遂に、彼にとつて忘れ難い日が来た。新宿からの電車の中で、彼女にばつたり会つたのである。その日彼は家へまつすぐ帰る筈なのを、高円寺に用事があるといつて一緒に電車を降り、のこのこと彼女の歩く方角へ歩きだした。

「僕、実は、家庭教師をしてるんです。その家は三丁目なんですが、ちようどお宅の前を通つても行けるんです。ですから、ご迷惑でなかつたら、お宅までお送りします」

「まあ、そうでしたの。今日もそちらへ?」

彼は、ぐいと唾を呑み、

「今日はどうでもいゝんですが、ちよつとのぞいてみます。ほんとは、月水なんです」

「月水……あたくしのお稽古とおんなじ日ですわ」

「なんのお稽古ですか」

「お茶ですの」

「学校はもうすんだんですか」