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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

上の妹の多津は、その後、例の話には触れようともせず、彼の方でも、別に穿鑿する気はなかつたが、ある日、下の妹の真喜が、みちみち、すつぱぬいた。

「お姉さん、あのことお兄さんにおつしやいよ。お姉さんが黙つてるなら、あたし、言うわよ」

「なによ、真喜ちやん、よけいなおせつかいだわ。兄さまはもう、ご存じなのよ」

「ほんと、お兄さん、多津姉さん、愛人ができたの、ご存じ?」

「知らないね」

「それごらんなさい。相手は、雲井秋生、ほら、小説家の……」

多津は、それを否認はしなかつた。彼も、なんの反応も示さなかつた。この話題は、それきりに、夏の夜の微風とともに流れて行つた。

そういう夏が、もう過ぎようとしていた。

深志からも、まつたく音沙汰がなかつた。母がときどき、前に荷物を運んだ運送屋に頼んで、下着類などを宿に届けさせているらしかつた。

その日もちようど日曜であつた。多津は、前の日から外出の用意をし、朝食をすますと、帰りはすこし遅くなるかもしれぬといつて、いそいそと出て行つた。真喜は、友達の家を訪ねる約束があるといい、これも、一人で、あたふたと出掛けた。京野等志は、久しぶりで友人の南条を誘い、どこかでいつぱいひつかけようと思いたち、電話をかけておいて、夕方、早めに家を出た。