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ちからもち
力餅
島崎 藤村
「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页
十二月の中旬からはもう天寒く、日の光も薄く、千曲川の流れも氷に閉ざされて、浅間のけぶりも隠れて見えなくなります。それから年を越して二月の終りまで、暗く寂しい雪空には日を見ることすらまれになって行き、庭に降る雪は消えないで積もった上に積もるものですから、しまいには家の縁側より高く、夜ごとに柱のしみ割れる音がして、硯の海も凍り果てました。
わたしはうずらのように小さくなって、雪のふりうずめる山里の家の窓でよく本を開きました。軒ばのつららは剣のようだとも言ってみたく、その長さは二尺にも三尺にも及びます。最初の一冬はわたしもこごえ死ぬかと思うほど、おおげさに言えばそんなに寒く思いましたが、でも一年暮らし、二年暮らしするうちに、ずっとわたしのからだには「抵抗力」というものが出てきました。わたしはきびしい寒さを恐れないで、塩のような雪が飛んでくる中を走り回り、山国の冬の楽しさを知るようになりました。わたしの教える学生たちは町に住むものばかりでなく、かなり遠くの村から学びに来る農家の子弟もありましたが、それらの青年は一里も二里もある雪道を毎日平気でかよっていました。