轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

力餅というものは大福に製して売るところもありますが、多くはあんころに造って、峠なぞを越す人の助けとします。わたしの生まれたところは信州木曾のような深い山の中ですから、東京へ出るにはどうしても峠を越さねばなりません。そのわたしが兄たちに連れられて東京へ修業に出たのは十歳の少年のころでしたが、中仙道にはまだ汽車のない時分で、子供の足にも峠を三つも四つも越したことを覚えています。ばばがなくなりましたおりにも、葬式のため郷里へ帰りまして、その帰り道に和田峠というところを歩いて越し、下諏訪のほうへ出たこともありました。あの峠は五里もあって、遠く山と山との間にひらけた空のかなたには浅間のけむりのなびくのを望むようなところです。あの山坂を越すのはなかなかほねがおれますから、旅人はいずれも峠の上の休み茶屋に足を休めて行きます。それからずっと後になって、今度は自動車で和田峠を越したこともありましたが、あの峠の上まで行くと、西餅屋というのが一軒残って、そこで昔ながらの力餅を売っていました。

わたしたち一生の旅の間には、いくつかの峠も待っています。あんまりおなかがすいていては、けわしい道のよじのぼれるものでもありません。