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かいじんとしょうねんたんてい
怪人と少年探偵
江戸川 乱歩
「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页
「およげるよ。きみは?」
「ぼくのクラスで、いちばんおよぎがうまいんだよ」
そのとき、頭の上から、大きなわらいごえが、きこえました。
「わはははは……きみたち、せいぜいおよぐんだな。だが、何時間およげるね。その水は一日や二日では、ひかないんだぜ。そんなにながくおよぎつづけられるかね。わはははは……それじゃ、あばよ」
人形の顔をもつ怪人が、高いおとし穴の口から、そう言ったかとおもうと、パタンと、そこの戸をしめてしまいました。その戸は上のへやの床板と見わけられないようにできているので、こんなところに、おとし穴があるなんて、だれにもわからないのです。いよいよ運のつきです。
丸い穴から、あふれ出す水のいきおいは、すこしもおとろえません。おそろしい音をたてて、おとし穴の床におち、床にたまる水は、だんだんふかくなっていきます。
水はもう、立っているふたりの、ひざのちかくまでのぼってきました。
まだ秋のはじめですから、つめたくてたまらないほどではありません。ふたりは、いざとなったら、およぐつもりで、上着やズボンをぬいで、その用意をはじめました。
「ぼくたち、たすかるだろうか」