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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

しかし、まさか中村さんが葬儀車にのっているはずはない。怪人の変装にきまっている。うまいもんだなあ」

小林少年も変装の名人でしたが、それだけに、相手のうでまえが、よくわかるのです。

小林少年は、ぴったりと、へいにからだをつけて、くらやみの中をすかしてみました。

野村さんの門は、まだ開いたままです。中村警部にばけた怪人は、門をくぐって、どうどうと、げんかんのほうへ歩いていきます。

ベルをおすと、書生がドアを開きました。

「わたしは、警視庁の中村です。みち子ちゃんは、もうかえっているでしょうね。それについて、ちょっと、ご主人に、お話ししたいことがあるのですが」

書生は、いちどおくへはいって、すぐにもどってきました。そして「どうぞ、こちらへ」といって、応接室へ案内するのでした。

小林少年は、怪人がドアの中へ消えるのを見さだめてから、ソッと門内へすべりこみました。

門からげんかんまでは五十メートルもあって、たくさんの木がうえてあります。小林少年は、腰をかがめ、その木のあいだをぬうようにして、裏口とのさかいにちかづきました。そして、やみの中に身をひそめながら、口笛をふきました。