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かいじんとしょうねんたんてい
怪人と少年探偵
江戸川 乱歩
「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页
ほかには、だれもいません。
「中村さんですか、わたし野村です」
と、まず、あいさつをしておいて、
「いま、ここへ、あいつが、とびこんできたはずですが……」
「あいつとは、だれですか」
「人形の顔をもって、まっかな服をきたやつです。くれないの宝冠を、もらいにきたといいました」
「人形怪人ですか」
「そうです。じぶんで、そう名のりました」
「おかしいですね。ここへはだれも、はいってきませんでしたよ」
にせの中村警部は、なにくわぬ顔で、答えました。
そのときです。とつぜん、へやのどこかから、きみのわるい笑い声がひびいてきました。
「うふふふ……、おれはここにいるよ。魔法をつかっているから、きみたちの目には、見えないのだ。くれないの宝冠は、きっと、ちょうだいするからね」
天井から、聞こえてくるようでもあります。ゆか下からひびいてくるようでもあります。とんと、方角がわかりませんが、へやの中にはちがいないのです。しかし、怪人のすがたは、どこにも見えません。
「その宝冠というのは、どこにおいてあるのですか」
にせの中村警部が、たずねました。
「わたしの書斎の金庫の中です」
「そこへ行ってみましょう。