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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

「えっ、腹話術ですって? その腹話術をだれがやったというのです」

「むろん、わたしではありません」

「すると、ぼくが……」

警部が、あきれたような顔をしてみせました。

「そうです。あなたです。あなたのほかには、だれもいなかったのです。中村さん、なぜ、こんなことをいうか、おわかりですか。あなたの上着のうらですよ。ボタンをはずして上着をひろげて見せてくれませんか」

それをきくと、警部の手が、ぱっと、ズボンのポケットから、あがりました。その手には、ピストルがにぎられていました。

「手をあげろ。そして、そのいすに、かけるんだ。すこしでも動いたら、ピストルのたまがとびだすぞ。さあ、金庫のダイヤルの暗号をいうんだ」

にせ警部は、とうとう正体をあらわしました。そしてピストルのさきで、野村さんの胸を、コツコツたたきながら、ダイヤルの暗号をいえとせまるのです。野村さんはしかたがないので、暗号文字をこたえました。それはミチコというのでした。かわいいみち子ちゃんの名をとったものです。にせ警部は、ピストルを、いつでもとりだせるように、上着のポケットにいれると、金庫の前にしゃがんで、ゆっくりダイヤルをまわすのでした。