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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
あなたが、本格の成長と云っていらっしゃること、ただわたしへの励しと伺うばかりでもありません。
「広場」いろいろ思います。あれはあのテーマの必然として、外にありようはないのです。しかし、もしひょっとして、あの小説の主人公としての何か空想的な心持で、ミス・リードを気取ったら、どうだったでしょうか。本当に面白いわね、幾巻もの詩集なんかどこにもないのよ。ああいう詩集を愛読してからの心で考えると、何か一寸した角の曲りかたで、こんな詩もないわけだと思うと、不思議ですね。作者のイマジネーションは自由だと云っても、あの背景の中へ重吉を案内して、公園の楡の木の五月の葉かげで、朝子に震撼的感銘をもたらすだろうという細部までを保証することは出来ませんもの。それは全く出来ないわ。重吉という人物には他のひとが配合されなければならないでしょう。それが自然ね、すると、作者はやきもちをやかざるを得ないのね。やきもちというようなややユーモラスな云いかたを借りるのですが、そんなものではなく、ああ実に残念と唸る、そういう風でしょうねえ。あのテーマは現実にぬきさしなく展開されています、そして長篇的構成をもってつづいて居ります、ね。