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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
そんなところもあるようで。
困難な山阪をついらくしないで小さな車を押しあげようというとき、その輪は極めて丈夫な車軸をもっていなければならないと同時に、自在な角度に動く巧緻な設計を具えていなければなりません。けれども、車をああうごかし、こう動し安定を保とうとしているうちに車軸は変な磨滅をして、こんど真直車を押してゆくというときすらりと進まず、必要もないのに、あっちへくねりこっちへくねりもしなければならないこともあり。もののすりへることについて、どの面がどうすりへらされるかということについて、少くとも自分だけははっきりして科学的観測の能力をもっていなければならないのねえ。この頃は深くそのことを感じます。自分の物理学を知っていなければいけないと、ね。それぞれに違った条件の中でそれぞれちがったへりかたが生じ、そういうことが全然ないというようなことは現実にあり得ないのですもの。
パウル・ヴォルフの写真帳が偶然目に入り、うれしくておめにかけます。私が余り砂っぽい風を顔に吹きつけられているせいか、ヴォルフの芸術のたっぷりさは実に快く、きっとあなたもいいお気持でしょうと思って。