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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

さ芸術の明るさとはどういうものか、ということを書くわけだったのですが、作品に即してかこうと思っていて間に合わなかったのよ。決してサボには非ず。来月かきましょう。小説の明るさ、明るい小説なんて言葉が文学の領域に入っていることさえ変なのだから、そこから先ず語り出さねばならないわけでしょう、だからつまりは今日の生活と文学の論となり、そこまで踏み込まなければつまらない。

『文芸』で評論を募集したらパスカルの何とかデカルトの何とかですって。選者に小林秀雄がいるというばかりでなく、そのことに若い世代の文学的資質の傾向、及び、トピックを見つける分野の狭くかぎられている客観的な事情等あらわれていて、私は大笑いしました、じゃパスカルだの何だのと、選者はおそらく先ずそんな本をよまなければならないのだろう、と。助ったわ、私が選者でなくて。

『現代』はそうして見ると、『現代文学論』の素材的でもあるわけですね。それは知らなかったわ。古いのでも送って頂いて見ましょう。作家がいつしか段々臆面のないものに化しますね、知慧というものは常に或る美しい含羞をもつものです。その新しさ、新しさをうけいれてゆく弾力、自分の未発展なものへの期待、その故に羞らいをもっている。