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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
来年で十年よ。
作家としてリアリティーへの追究が生涯を通じたものだということは実にそうですね。私は重吉という人物は本当にそこに動く暖い人がいるように描き出したいと思います。今は少年の重吉から書きたいわ。そして、いつか手紙にかいた米の小説ね、その中で。私は一つの雄大なプランを考えているのよ。「海流」などでも一部そうだったのですが、ひろ子の家庭の社会的なありよう(形成)とその分化と、重吉の家庭とその分化と、もう一人店員である女の子の家庭とその分化とが、全く互にかかわりのなかった地域から源を発して、一つの大きい歴史のなかで結ばれて行くことについて、あの小説を書こうとしはじめたのですが、今はもうすこし深まり進んで、重吉の環境は、三代に亙る日本の米の物語の推移として書いて行こうと思うの。ひろ子の境遇は、都会における富の分布の反映として。だから、先のように無理に一つの本の中にはつめこまず、三冊ぐらいになって、一つの大きい交響楽が組立てられるわけなのですね。それだけの腰をすえて、ねっちり余念なくかからなければかききれず、「海流」のようにせき立った目前の輻輳になるのだわ。