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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
その方向というのは林町なの。実に曲りにくい。おさえつけて納得させたつもりで、もうそっち向いているものとしておくのに、気がつくとこっち向いて、だってと云って坐っています。奇妙ねえ。実に奇妙ねえ。感情的になるまいとしているけれどももしかしたら、これは単なる感情ではないのではないかしら。ふっとそう思います。私はこれまでも何だかどうしてもそうは出来ないということを野暮に守ってそれに従って、いろいろな生活の刻み目を越して来ています。どうしてもそういう気になれない。これには何か私の天然的なそして、それが自然だというものがこもっているのではないかしら。この自然の抵抗に私として耳を傾けるべきものが、案外にあるのではないでしょうか。
この感じは、あなたにきいてもおわかりになり難いわね。どんなに肉体的な抵抗であるか。それは丁度抵抗しがたくひかれるものに抵抗することが全く出来にくいと同じ程度に困難です。こんなに何だか承知しない生きものが腹の中にいるのに、それを無視するというのが果して自然なのでしょうか。そうしてよいのでしょうか。全感覚が感覚として反対するというこの感じ。