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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
をもやっぱり自分のなかにとりこんでしまってゆくところ、そこにつまりは人間の面白いがんこさ即ち小説があるのではないか、と。人生におけるその作家の線のひねりかた面白いわねえ。実におもしろいわねえ。常識の判断でだけスラリヒラリと身をかえせたら、やっぱりそれだけのものだわ。なかなか味がある、という、どうもそういうところ迄わかりそうな気がして、たのしみのようです。動くとしても、もうすこし、この味をかみしめてからよ。六年ほど前上落合に一人いて、あのときも一生懸命暮して、「乳房」のような愛すべき作品をかいて居りましたが、あのときなんか、寂しさをやっぱり見たくないつらとして日々の中ににらんでいたわね、どうもそう思われます。私たちの生活は、いろいろのものを私たちに味わせていて、これだってその実に正統の愛子なわけだのに、と思って、私の明るさも陽気さの範囲であったかと思ったりいたします。陽気な人っていうのは、私は土台淋しいのきらいさ、と口やかましく賑やかに暮して、それは小説なんか書かない人だわ。こんな話、一寸ちがって風味がなさるでしょう?
あっちのうちで、かんを立てて、我ともなく自己肯定に陥っているよりは、この方が余程人間をましにすると信じます(今のところでは、よ)、細かいことでいろいろの心持を経験して。