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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

きのうあのお二人は愈※(二の字点、1-2-22)引越し完了よ。日曜日でしたが、その前々夜やっときめて来て、六畳一つの集合住宅で二十五円也。日曜日引越すと云っていたのですが、午前中ぐずついていて、どうなるかと思ったら越せました。この頃に珍しく俥夫がすぐひきうけてくれたのですって。

おかつぶしをあげたり梅干あげたり大いにおばさんをやって、それがすっかり出かけたのが四時すぎ。さてそれから四半の廊下の隅につっこんである小さい方のテーブル出しかけて布をさがしてかけて(手が汗だらけだもんで、こすれて痛いから)あっちこっちあけて、スダレかけて、さて、と昨夜はそこに腰かけてかなりエンジョイしました。

十日にあのひとたち来たから殆ど一ヵ月ね。浩子さん本当に名残惜しそうでした。でも今度引越す代々木上原というところのごく近くに女の従姉だかが家をもっていて、いろいろ世話して貰えるし、いいでしょう。浩子さんはどこへ行っても周囲と自然にやってゆける性質ですから。幸きのうはいく分しのぎよかったから引越しにはもって来いでした。

私もここへ越して来て大変楽よ。茶の間とはカギの手にこんな工合に出ていて、左手の二階の段々のつき当りだの台所の方だのから北風が通って下では六畳の次に涼しいのよ。