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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

私は割合夏はがんばれる方だから、今のところ珍しくて、調子が分らないようです。どっこも悪いのではないんでしょう、熱もないし。一年の間の食物の変化なんかがこういう工合にして影響をあらわして来るのでしょう、きっと。今年の夏はきっと仕事のある人たち、何だか精力的でないと思っているかもしれないわ。お米にはこの次の配給のとき一キロ青豆のほしたのがついて来ます、お米の代りに。

こんなこと書いている、これも一種のウォーミングアップかもしれないからどうぞあしからず。

仕事の下ごしらえで、アランのちょいちょいした論集をよみました、幸福についてや何か。アランはこの二三年来日本に流行して紹介されるフランスの哲学者よ。アンリ六世高等学校の教授。直観的良識をアラン独特の感性にとんだ表現で語ってゆくひとですが、日本にアランのはやる傾向の意味もわかります。アランには体系というものは一つもありません。一定の立場というものもなくて、あればそれは全面的というようなもので、強制のない美しさをあらゆることに求めているところがある。おわかりになるでしょう? ちょいと面白いところもある。だが、文学について又人生態度について不十分なところ或は間違っているところもあります。