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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

まあ、といそいで出てきいたら、外の民家へ泊っていて、会えるというので、すっかりところをきいてかきつけたところへ、おかあさんがあたふたおかえりで、そこで達ちゃんはいろんな注文をしたらしいの。いつがええの? 今日? そいじゃすぐ仕度せて、ということになって、御注文のビールを何とかしてとどける方法はないかと大さわぎをしたけれども駄目で、結局四本包に入れてゆくということになり、私は七輪をパタパタ煽いで、ゆで玉子をこしらえるやら、鰻をやくやら(丁度河村さんがくれたので)珍しくとっておきのマイヨネーズもトマト、胡瓜もつけて、一包みこしらえて、それおしめ、それ着代えと大騒動の上、一時五分の上りでお立ちでした。今夜は広島泊りです。

今夜は珍しく私はひとりでここでお留守番ということになりました。タバコと塩だけ売っていればいいから大体わかるでしょう。店の留守番というのは馴れないで妙ね。奥へひっこんでいたのではものにならないから、ここへ出張って、これを書いたり、「ベリンスキー選集」を読んでノートをとったりという次第です。

友ちゃんももう会えないものとあきらめていたところを思いがけなかったので、本当にうれしそうです。