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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

私は芸術家の女のひとの伝記がもうすこしあったら面白かったと思います、音楽とか絵とかね。本朝女流画人伝というものだって私が書いてわるいということはないわけでしょう? そういう仕事だって、やはり前人未踏なのよ。いろんな女がどうして女の業績全般に対してひどく無頓着なのでしょうね。発揮は私いつも輝とかいていたようです、これからは手へんにいたしましょう。光の方がいかにも自然にかけてしまっていたのです、でも世間から云えば当て字ということでしょう。

本当にあの本はともかく今というところですね。

持薬のこと。きのうはでも思いもかけなくいくらか手にいれることが出来て幸運でした。薬屋さんも親切なのだとしみじみ感じます、全く苦面してくれるのですもの。粒々ありがたくのみこまなくてはならない次第です。

派出婦のこと、困るのは経済上の点です。ほかのひとを置かなくてはならないなら、この人がいいという人柄で、珍しく縫いものもすきでやっています。縫物が好き、というような人は珍しいのよ。常識的家政学からいうと、派出のひとを今置いておくなんて狂気の沙汰ですが、私は仰言るように背水の陣をしいて筑摩の仕事をしようと思うので、そのためにはやはりいて貰わなくてはなりません。