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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
人間が俗化してゆくモメントは何と微妙でしょう、私は自分についてやはりそのことを考えるのよ。私の場合にはきちんとしたさっぱりした自分たちの生活をやって行こうと決心している、そのことのために丁度模範生がいつか俗化するような俗化の危険をもっていると思うの。こういうところなかなかの機微ですから。今のような生活の問題があって、あらゆる面から自分の生活感情をしらべる必要がおこったりすることも、有益よ。
さて、チクマの本のこと。この案は立派ねえ。これは魅力のふかい構想です。しかし、云わば文芸評論をかき得るか得ないかという空気とつながった問題があってねえ。
女性の生きかたの問題だけの糸をたぐれば、これは文学史を流れとおして今日に到り得るのよ。それはいつか書いてみたいと思っていますし、書けるのよ。
いずれは文学作品だのから語るのでしょうが、形は、一つのトピックからひろがってゆく形、間口は小さくて奥でひろがる形になってゆくのではないでしょうか。だってね、さもないとそれぞれの時代の人間生きかたについての中心的な観念がいきなり辿られることになって、それはとりも直さず校長さんのかけ声となってしまうでしょう。