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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

きょうは私としてはいい雨よ。やっといくらか落付きましたから。自分の机をおくところだけ、どうやら埃の中から島をこしらえて、となりの室や廊下にはまだがらくたの山をのこしながら、エイ、と今日はすこしものを書いてさっき送り出したところです。

八月二十九日に林町へ行って、さて、とからかみをあけて長大息をして、それからはじめて五日までに一応あっちのものをこっちへもちこめるようにして、目白の荷は三日にもち出しました。九月一日に、何と話が間違ったのか荷車が一台来て、ふとん包みなんかもち出して、一日おいて三日にオート三輪四遍往復して、あとリヤカー二台で大きいものを動かしました。本がえらくてね。重量も大きいし。それから四日にもう一人来て貰って二階へはこびあげて、畳もいくらか埃をはたき出して貰って、ともかく納めました。本はまだそのままよ。玄関わきの書生部屋に入っていて、これには閉口です。どうしたって出さねばならないから。五日には派出婦さんに一日休みをやって、七日の日曜日に佐藤さんが引越しました。引越しをすると、本当に簡単に暮したいと思いますね。私たちのような生活でさえやっぱりいろいろとごたごたがあるわ。