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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
今にすこしは変るでしょう、利口は悧口よ。なかなか可愛い息子です。四月十日からですって。近いから心配なくて何よりです。何を祝ってやりましょう、あっこおばちゃんのおじちゃんというお方は何がいいとお思いになること? いずれ御考え下さい。二人でやりましょうよ、ね。太郎はぼんやり覚えて居るのよ、あっこおばちゃんのおじちゃんを。眠くなって九時すぎかえり、そしてたのしい晩を眠った次第です。
ときどき思いがけないボンボンを見つけたりして話しますが、きのう銀座の方で、私は何とも云えない見事な花の蕾を見たの。飾窓の中におかれていて花やでなかったから手にさわることの出来なかったのは残念ですが。蘭の一種かしら。大柄な弾力のこもったいかにも咲いた花の匂いが思いやられる姿でした。ほんのりと美しくあかみさしていて。自然の優雅さとゆきとどいた巧緻さというものは、おどろくようなときがあります。この頃温室の花は滅多にないのよ、石炭不足ですから。本当に珍しく。花の美しさって不思議ね。決して重複した印象になって来ないのね。描かれた絵だと、何か前にもその美しさは見たというところがあると思うのですが。