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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

本のことも改めて気になり。

今文学史をずっと一とおり目をとおしノートとって居ります。ジョルジ・サンドと同じ時代に、フロラ・トリスタンという人がいたのを御存じ? 私は存じませんでした。この女性はサンドとは一つ年長ですが、サンドが晩年には田舎の家の領地へ引こんで、「悪魔ヶ淵」その他、初期の作品の発展ではない方向に向ったとき、フロラという人の方は一貫して、歩み出しをつづけた婦人だそうです。ゾラの時代ね。こんな人のことを知ったりして、それらは、婦人の作品で物語る女性史の中へくりこまれます。フランスは女詩人をどっさり持っていたのね、その人たちは前大戦からその後にかけて大抵活動をやめてしまったのですね、サロン的詩人であったというわけでしょう。閑雅に咲いた花というわけでしたろう。生活の花ではなかったのね。そういう時期に、各国の婦人作家がどう暮したかということも考えて見ると面白いわ、ジイドみたいに聖書ばかりよんでいた人もあるのですし。ブルージェが「愛」だの「死」だのという観念ぽい題の故もあって今の日本で大いによまれているのは妙なことです、ドルフュスのときブルージェは大きい虚偽の側に立った恥を知らない男です。