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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
思います。花を、花圃にはしないであっちこっちへ乱れ咲くように植えたら奇麗でしょうねえ。自然な起伏だのところどころの灌木の茂みだの、そういう味の深い公園は市中には一つもありませんね。庭園化されていて。いろんな国のいろんな公園。菩提樹の大木の並木の間に雪がすっかり凍っていて、そこにアーク燈の輝いているところで、小さい橇をひっぱりまわしてすべって遊んでいる小さい子供たち。仕事からかえる人々の重い外套の波。昼間は雪を太陽がキラキラてらして、向日葵の種売りの女が頭からかぶっている花模様のショールの赤や黄の北方風の色。その並木公園に五月が来ると、プラカートをはりめぐらして、書籍市がひらかれ、菩提樹の若いとんがった青緑の粒だった芽立ちと夜は樹液の匂いが柔かく濃い闇にあふれます。アコーディオンの音や歌がきこえ出します。そして、白夜がはじまって、十二時になっても反射光線の消された明るさが街にあって、そういう光の中で家々の壁の色、樹木の姿、実に異様に印象的です。
三月はまだ雪だらけね。日中は雪どけがはじまります。それはそれは滑って歩きにくいの。ミモザの黄色い花が出ます、一番初めの花は、雪の下という白い小さい花です。