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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
こうしてみると、一人で女中さん対手の生活というものは、自分ではのんきにやっていたつもりで、実は輪廓をくっきりと一人で始末したところがあって、ぼーっとしたところがなかったと思います。これが又先でどう変化してゆくかは分らないけれども、少くとも当分、こうやって、うちのものがごたごたしてやってゆくのよかったと思います。
ですから思ったよりよかったということになるのよ、どうぞ御安心下さい。勉強するために一日中部屋にいて苦情が出るわけではなし、お喋りの中に入ったからと云って苦情が出るわけではなし。いずれにしろ私が今はここでよかったと思って暮せていることはお互の仕合わせね。あなたにしろ、すぐ通じるからユリが工合のわるい巣箱で絶えずパタパタやっていたら、やっぱりお落付きなさらないでしょう? そのことではびっくりしたことがあるのよ。九月頃引越しのことで私がちっともおちつかずせかついていたとき、そちらも何となしそういう空気で、生活の流れの生々しさを深く感じたことでした。私はよく生活しなければいけないのだ、と改めて思いもしたのよ。
生活って面白い生きたものねえ。そういう流れのまざまざさでは、私たちに距離がないようなところ。