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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

きょうはね、何ということなし、あなたのまわりにいるのよ。そして、ちょいと用事にいなくなって、又来て、何かと話しするの。

私たち十分自分たちの時間があったとして、あなたは何か仕事以外の道楽をおもちになるたちでしょうか、たとえばゴを打つでしょうか、ショーギをおさしなさるでしょうか。この頃のゴの流行は相当のものらしい様子です。ゴ、茶、禅、お花、習字、そっちの方角ね。この間哲学をやるひとがやっぱりゴをやっていて、ゴのつき合いは自由自在にひろがれるからいいと云っていたわ。わかりますけれどもね、私は、でもという感じがするの。読むべきものするべき勉強がうんとあって、それをしないで、ゴうっていられるというのはどうも少し妙ね。今時、変にうごきまわるのはろくでなしというのは分るが、だってねえ、うごかないということと、ゴをうつということとはすぐ結びついてそれで終りではないわけでしょうし。

私の道楽はなさすぎるわねえ。音楽だってせいぜい新響の定期をきくぐらいのところですし。二人とも案外芸なしなのかもしれないことね。のんきな一日は、気持のいいところへとぐろをまいて本をよんでいて、たんのうしているというのが落ちかもしれないわね。