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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

今年の冬は忘れがたき雪景色でしょう。

まるでちがうけれども、ここにユトリロの書いた雪ばれの絵のハガキがあります。雪をよろこぶ心がいくらか出ています。刷りがわるくて台なしだけれど。

ユトリロとしては心情的な作品ね。

岡本太郎の個展の案内が来ました。シュールですね。ピカソの後塵を拝し、しかもそこから東洋の美の新しさをつくり出そうという努力をしているらしく、いかにも頭脳的です。この若い人はまだ理性的ということ、意志的ということと、頭脳的ということの根本的なちがいが分っていないと思います。

しかしこの頃深く思うのですが、この二つのものの本質の差別が出来るか出来ないかということに、芸術家の歴史的な質のちがいがかかって居りますね。過去の純文学はその尖端を頭脳的なもの止りで、しかもそこでは一面の大きい無智、偏見のため、すっかり堕落してしまった。ジイドのこしらえものの鋭さ。横光の似而非芸術。川端康成だって心情をそこへ導いたものは頭脳的だから、心情的なものの低さではもちこたえられず。

益※(二の字点、1-2-22)明瞭になります、次代の芸術家の資質として求められているものが。