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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
その両面からの関係のなかにその本が評価されたらうれしいと思います。このことはつまりいつでもどれについても云われるのでしょうが。
二十七日のお手紙でしぼんだ風船になったことやこのお手紙にこめられているものいろいろ自分の心として考えてみて、自分の仕事に対する心持というものの機微を考えます、極めて高いごくリアリスティックな規準からの批評というものが、そのときの現実のなかで一つの本なら一つの本のもっているプラスの意味をそれとして見てゆくものだということは自明だけれども、著者としてその標準で自分の仕事を自分からみているということは、やはり優秀な著者の少数にしか期待されないことなのかしら、と考えるのです。一般に立っての美点というとき、一般と極めて高くリアルな標準というものとの間にどんなひらきがあるのでしょう――つまり、一人の著者が、一般に立って云えば云々と美点をかぞえて貰うことで、いささかは心なぐさむというようでは、と思うのです。自分としての標準が確立していてしかるべきですから。その標準でいつも云って、いつも云うことはその標準でのことという自信があって、それ以下の比較は語るに足りない自明なことというわけであっていいのだと思うから。