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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

一人ならば、身体に火熱を覚えるほど大股に駈けだすだろう。二人連れであるから何か話をしたかった。それに、道は駈けだして直ぐ終りになるほど近くはなかった。

歩きながら高倉は云った。

「おぬしの生れた越後の野と、これは、どちらが広い?」

「――と云ったところで、測ってみたわけじア無いし」

「どちらが、よい?」

「そんなこたア、ね――」と行商人は思い出して笑った、「云うがのことはありますまい」

「そうか、それなら何故おぬしは?」

「こいつは商売、今じゃア、木を伐る人間のいるところは、へえ――臭いで判ります、な、木と云えば、祖父の代から木と暮して来てましたね、はじめが山師、次が杣夫、それからこういう鋸の目立て商売にまで成りさがって、だけんど、――失礼ながら、木のことについちゃアこちらがお師匠さまだ、はっはっは……」

笑うその男は、みそッ歯をむきだして空を向いた。不逞々々しいものが、ちらッと若い高倉に反映した。

「よくもこのような辺鄙なところまで」

「なアに――」と彼は言下に云った、「顎の下のためだアね、坐っていたじゃア食えないように、生れるとから決っていたもんでがんすね」