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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

大きい船にのって、またひろい海へ出て、港から港へとゆるやかにうつる景色をたのしみながら日本へ帰るということが、つや子のたのしみらしかった。長椅子の上にずらりと並べられている船づくしのエハガキをわきからのぞく姉の伸子に、つや子はおかっぱの頭をすりつけながら、

「このひと、ほんとに船すき」

目をエハガキからはなさないで云ったりした。

ロンドンにのこった和一郎からは、小枝とよせ書のエハガキが来た。ロンドンの秋のシーズンがはじまります。この土曜日にクィーンス・ホールでシーズンあけの音楽会がありますが、エスモンド街にいながらにしてそれが聴けるのは幸です。ミセス・ステッソンもおかげで今年は冬がたのしみだと大満足です。そんな文面がいかにも一日のうちに、ひまな時間をたっぷりもっている人らしい和一郎の念の入った装飾的な文字でかかれて来た。

そういう和一郎のたよりには、用心ぶかさがあった。少くとも、伸子にはそう感じられた。ロンドンとパリに離れていても、絶えず若夫婦の贅沢や浪費を警戒している多計代に対してよこすたよりには、和一郎たちも、むしろ彼らの生活の消極面から書いている。