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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子は、どこへ行って何を見て、何をきいて、と二人で身軽に、好奇心をもって動いて暮している消息を、弟夫婦からほしいと思うのだった。
クィーンス・ホールの音楽会をエスモンド街でいながらにして聴けるのは云々と、和一郎が個性のない丁寧さで書いてよこしているのは、新しくひいたラジオのねうちが早速あらわれているという意味の報告なのだった。
和一郎と小枝がミセス・ステッソンのところへ引越して行って、三度目にホテルへ来たとき、はじめて和一郎たちの室が電燈でなくてガス燈だということを知らされて、佐々のものはみんなびっくりした。それも、和一郎が、ガスにしては部屋代がすこしはりすぎているようだね、と云い出したのがはじまりだった。ミセス・ステッソンのところでは、階下の客室、食堂、居間だけが電燈で、二階から上の部屋部屋では、昔ながらに蒼白いガス燈をつかっているというのだった。
「何だろうか、まあ! ガスが洩れでもしたら命にかかわることだのに。――お父様、あなただって御覧になったのに」
「いや、そこまでは、おれも気がつかなかった」
「やっぱり申上げてみてよかったことね」
小枝が、泰造や伸子のうかつさをとりなすように、口をはさんだ。